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片町マエストロ
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諸江精寛 奇跡の逸品
「もしも戦争がなかったら九谷焼屋はやっていなかったでしょう」 諸江精寛さんは往時をふり返る。終戦当時は焼物を売るよりも集めるほうが難しかった。交通の便が悪く、収集先は自然と近場に向けられた。九谷焼は近くにあった。「その当時に仕入れた九谷焼は、いまなお売らずに残しているものもあります。感慨深いですね」
50年以上、九谷焼を見つづけてきた。つきあうほどに深く知り、知るほどに好きになるのが九谷焼だ、と諸江さんは微笑む。その九谷焼の魅力を広く現代に伝えていくのが諸江さんの使命である。
店舗の2階には、人間国宝の作家の作品がずらりと並ぶ。さながら博物館の様相である。これほどの作品を展示販売しているお店は、もとより全国では諸江屋だけだ。 かと思えば、1階には手軽な焼物が数多く置いてある。観光客や初心者に気軽に九谷焼を愉しんでほしいとの願いからだ。さらに2階ギャラリーでは、頻繁に個展が催されている。若手から熟練までの作家が作品を世に披露する場を提供している。次代にむけて新しい作家の発掘に余念がないのだ。「火の洗礼を受けて生まれる九谷焼は、2つとして同じものが存在しない。奇跡の逸品なんです」 100年の歳月を生きてきた諸江屋は、これからの100年も、奇跡の語り部として生きていく。
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